■こんな家欲しい
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■僕たちの家
以前から個性的な家に憧れていた。
他にはない僕だけのカタチを思い画いていた。
「住まいを見ればその人がわかる」って言うらしいが
その通りだと思う。自分にお似合いの家をちゃんと造りたい。
計画を始めてから、いろんな本も見たし設計者の話も聞いた。
そのうち良い家をつくるためには、建て主の考え方が、
大切であるといったことも、だんだんと解ってきた。
僕たちが一生過ごすにはどんな住まいがふさわしいのか。
どこにでもある展示場タイプの家はもちろん欲しくないし、
かといって、いかにもフアッショナブル、さらには
奇をてらったかたちにも、もうひとつ興味が湧いてこない。
どれも飽きのこない家としては、ピンとこない。何かが違う。
何気ないなかに、キラリと光る何かが欲しい。
自分達なりにいろいろ考え、画や模型にも表してみた。
そうこうするうち設計者の手助けもあって少しづつまとまって、
やがてカタチとして固まった。かなりの時間がかかったが。
でも、そのあたりの基本的な方向が決まると
あとは脇道にそれないように、前を見て走るだけ。
僕たちの家は基本的にはローコスト。
だからそんなに高価なものは使えないが、
空間だけは贅沢につくりたい。
安くてもいい、コストに見合った素材で自分たちの
空間をつくり、いさぎよく住むのだ。
そんな思いにふさわしい、ふたつの素材が僕たちの心をとらえた。
石綿の無塗装板とシルバー色アルミ板。
一見クールを装いながら、そのなかに暖かさを秘めた素材。
いくら眺めても飽きない、僕たちはこの魅力のとりこになった。
聞くとそれほど高価なものでないという。
「これでいこう!」決めるまでにそう時間はかからなかった。
これと荒削りなシルバー塗り木材のコントラスト。
異なるこれらの素材を組み合わせてローコストを目指そう。
でも、それはどれもこれも安いものを使うことではない。
意味のないものを切り捨てて、効果のあるものを使うことだ。
このような考え方から床暖房と手づくりキッチンセット、
そしてウッドデッキはぜひとり入れたかった。
もちろん外部の仕上げは、内部と同じお気に入りの石綿板。
間取りは、室内まで導かれた長い路地を経て、玄関を兼ねた
土間、そして広間、土間を挟んで和室。水まわりは中2階。
2階は洗面を兼ねたプレイルームと個室といったつくり。
仕上げは、広間が先の石綿板の床とアルミ板の壁。
和室は和紙貼りの壁。その他は自然材をを多く使っている。
この家の中心的存在の土間は母家からの通り抜け通路も兼ねる
路地から土間、そして外へと建物を一周できる。ちょっと遊び心。
「設計はできたが、はたして思い描いた空間になるのだろうか」
大きな期待の片隅で、不安もちょっぴりある。
でも自分たちで納得して選んだ道、たぶん後悔はしないだろう。
「さあ、いよいよ僕たちの家がスタートだ!」
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家づくりは夏とともに終わった。
工事中はいろんなことがあった。悩みもしたが、
同時に自分の家ができあがっていく楽しみも味わった。
いろいろな思い出を残してようやく僕たちの家ができ上がった。
メーンの半吹き抜け広間はのびのび自由に使えそうだし、
石綿板やアルミ板も思い通りそれぞれの顔を見せてくれている。
1階と趣を変えた2階は素朴な空間だ。自然素材は味わい深い。
そして和室、日常の生活を重視した他の部屋のなかにあって、
この1室だけは非日常空間とした。たまにはこういうところで
日頃のわずらわしさを忘れてしまうのもいいかなと。全体には
「豊かなローコスト」のコンセプトは生かせたと思っている。
この住まいは100点ではないかも知れない。でも、それを
乗り越えたところで住まえると思う。
おおらかな空間や明りの変化はマイナス点を補って余りある。
できあがって今思うことは「家はコストでは決まらない」。
本当にどのような家になるのも考え方次第だとあらためて思う。
家というかたちづくりは一応終わったが、住まいづくりとしては
まだ未完成かも知れない。これから生活の息吹きを入れなければ。
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僕たちが思いを込めたこの住まいでの生活も数ヶ月が経ち
ようやく身体にも馴染んできたかなと思う。
知人・友人も訪れいろいろ感想を聞かせてくれる。
それを聞くのもまた楽しい。
また、あらためて見直すと、あわただしかったその頃や、
そこに携わった職人さんの顔が浮かび懐かしくなったりもする。
始めての冬を迎えた。どうしても暖かさに気が向いてしまう。
晴れた日は大きな窓からの日射と、それで暖められた床の石綿板
いわば自然の太陽熱床暖房で充分に暖かい。だが、夜になると
逆に大きな窓が不利になる。外の寒さを大きく受ける。
早速本家の床暖房の出番となる。これは思っていた通り快適。
ついでに言うと、いくら床暖房でもいくらかの暖気は上昇するが
吹抜上部の小窓がとり入口となって2階が暖まる。思わぬ効果。
杉のムク板はキズは付き安いが暖い。素足でも耐えられる。
雰囲気は満足している。
ねらい通り広間南面の全面窓によって、外との境界はほとんど
感じられない。室内とデッキが一体となったのびのび空間だ。
その窓からの豊富な明りがアルミ壁で反射し、部屋いっぱいに
溢れ身体を包む。部屋の内に居ることさえつい忘れそうになる。
だが、一旦陽が落ちて夜モードに切り変わると、そこは別世界。
照明器具からの灯りが鈍く壁を照らし、安らぎの部屋に早変わり。
同じ場所でありながらこうも違う顔をみせる。素材選びは間違って
いなかったと思う。床や壁の仕業でふたつの雰囲気を味わえる。
また、それが許される土間は、わずかな灯りだけで夜を楽しんでる
その灯りを見ているとホッとする。今では最もお気に入りの場所だ
そんな新しい発見をした時はとても嬉しい。
家は本当にいろいろなことを教えてくれる。
建て主 M .T
※ 建て主は建築の専門家ではないが心得があり、当事務所が
協力するかたちでつくられた。
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